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15のラストです。長々とお付き合い有難うございました!


設定はこちらを参照ください。【人形遣い設定


【前編】はこちら
【中編】はこちら







「何故こんなことをした、杏里。事と次第によっちゃ『ダラーズ』はお前を許さねえ」


正臣の問いかけに、杏里は答えない。眼鏡の奥の瞳を紅く染め、じっと正臣を見ている。
「答えろ!」
杏里はゆっくりと口を開いた。その声は、何時も正臣と帝人と話す時と変わらず、穏やかな声。
「紀田くんは『罪歌』を知っていますか」
「……いや、聞いた事、ねえな」
「ダラーズの超機密事項にして、岸谷森厳博士の作品のひとつ、それが生体物質『罪歌』です」
超機密事項、という事は、末端の人形や人形遣いには入ってこない情報だ。岸谷、という苗字に引っかかりを覚える。
(新羅先生の身内か?)
「私のお母さんは、その『罪歌』の人体実験に参加していました」
杏里は、話しながら昔の事を思い出していた。


小さな古美術商を営んでいた杏里の両親。ただし、生活は厳しかった。少しでも生活の足しになればと、母は自らの身体を「ダラーズ」に差し出した。それを拾ったのが岸谷森厳。彼は生体物質である「罪歌」を使用しての人体実験を行った。その結果、父は「罪歌」の本体である刀に刺され、母はその罪と悲しみに耐えきれず自害。杏里は一人となった。
罪歌は母をとても気に入っていたらしい。そして、新しい宿主を探していた。杏里は身体を差し出し、罪歌をその身体に収めた。罪歌に飲みこまれないよう意識を保つのは杏里にとっては容易な事であったから、杏里と「罪歌」はそれなりにうまくやってきた。
「ダラーズ」で静雄を見かけたのは、その時だった。
研究室の向こうで戦闘性能実験をしていた静雄を見て、杏里の中の罪歌が騒いだのだ。


あのひとはとても強くなる。強い人はすき。あの人を愛したい。


(……罪歌が「個人」に興味を持つなんて珍しい)
杏里はそう思って、その場を後にした。その後普通の生活が送れると判断された杏里はダラーズの研究室から解放され―ただし研究対象としてはそのままに―高校生活を送ることとなった。帝人や正臣と出会い、普通の生活を送ってきた、はずだった。しかし。
(平和島、静雄さん。そして、折原、臨也さん)
彼らと出会った事によって、杏里の中の「罪歌」の心がまた息を吹き返した。


人を愛したい、静雄を愛したい、臨也よりも人を愛したい。


罪歌にとって人を愛すとは、自分の「情報」を植え付け「子」とする事。杏里は罪歌に誘われるまま刀を振るい、罪歌の情報を人に、人形に植え付けて行った。定期的に情報を摂取させなければ効果が無いので、力を振るい子を増やし、さらにその子が子を増やし、いつしか「切り裂き魔」事件へと発展していった。



「罪歌は、人を愛したい、ただそれだけだったんです。そして私は、そんな罪歌に寄生して、生きている。罪歌だけが、私がここに居て、お父さんとお母さんと一緒に幸せに暮らしていた証」
「そんで、その名前の通り罪を重ねて……って訳か?」
杏里は目を伏せた。
「……罪歌は、静雄さんに近づきたいと、そう言っていました。だから今回は、子を使って静雄さんを探させて、その間にも子を増やして、かなり大事になってしまいました……でも、今回のこの事で、さらに愛が深まったと、そう言っています。竜ヶ峰くんの事も、とても興味があると」
「……帝人に手は出させねえ。俺の『名前』にかけてもだ」
正臣が構えた。力づくでも杏里を止める、そう全身で表しているようだった。それを見た杏里の眼が、すう、と黒い光を取り戻した。
「紀田くんとは、戦えません。戦いたく……ありません」
杏里は首を振って、俯いた。正臣は構えを解く。頭を掻いて、ため息を吐いた。
「杏里にそう言われるとなあ……そういうとこに弱いんだよなあ、俺」
はー、と息を吐く。そんな様子を見ながら、杏里はぺこりと頭を下げた。
「今回の事は、きちんと私がダラーズに報告します。ですから……見逃して頂けませんか」
杏里は頭を上げない。何だかこちらが悪いような気分になってきた。正臣は仕方なく頷く。
「解った、わーかったよ! 杏里がそこまで言うならこの件は預ける! まあ杏里の責任感の強さも知ってるからな、うまくやってくれるんだろ?」
杏里は頷く。正臣は満足したように頷いた。
「……この事、帝人には?」
「……来るべき時が来れば、私が、竜ヶ峰くんに話します」
今は、まだ、と杏里が口を噤んだので、正臣は解った、と頷いた。
「じゃあその件も、一旦杏里に預けるからな。宜しく頼んだぜ」
正臣は踵を返した。下で倒れている帝人と静雄を回収しなければならない。
「杏里」
正臣は立ち止まった。少しだけ、杏里の方を振り向く。
「杏里は俺の友達で、帝人の友達で……大事な奴でもある。何かあったら、遠慮なく頼ってくれていいんだからな」
俺達の間に隠しごとは無しだぜ。そう言って、正臣は走って去って行った。
それを見つめて、杏里はふっと微笑んだ。それから、正臣の去って行った方向に向かって、深々と頭を下げた。



「罪歌と少女のお話、これにてお仕舞い、か」
杏里が居る場所とは対角線上に反対側のビルの屋上、オペラグラスを持った青年が立っていた。風に黒いコートがなびく。
「良いね【皇帝】。すごい力だ」
ハッ、と青年は愉しそうに笑った。
「あの力欲しいなあ。欲しい。そうしたら俺はもっともっと、人に近くなれるかもしれない」
オペラグラスをぱちんと閉じて、コートのポケットへしまう。
「『竜ヶ峰 帝人』君、かあ……」
会うのが楽しみだよ。そう言って、青年は屋上の柵を乗り越え、漆黒の夜へとダイブした。





「ダラーズ」直轄の研究所へ運ばれた静雄は、エネルギー切れと判断され、ダラーズのデータバンクにあった帝人の情報を与えられ、なんとか通常行動は出来るようになった。あくまでも仮措置なので、帝人に直接『餌』を貰うまで、戦闘等に費やすような行動力は、まだ回復しない。
ただその帝人も、電脳や、その周りの自身の脳への負担が大きく、倒れたまままだ目覚めないという事だった。
「静雄、紀田くん、ちょっと」
帝人を見ていた新羅が、研究室の外に居た二人を呼ぶ。
「今回の事で、帝人くんの能力の全体像がつかめてきたよ」
先ほど、帝人が力を使った時のデータを取られていたらしい。それをプリントアウトしたものをぺしんと新羅は叩いた。
「彼の力は……周りに影響が強すぎる。それに、彼の力が他の機関に渡れば、大変な事になる」
だから、と言って、新羅は、眼鏡の位置を治した。
「ダラーズは、彼の能力に制限をかけることにした。彼には解除できないような「鍵」を今から仕込む。一応、鍵の存在は伝えるけど、彼には解けないようにしておくから」
安心してよ。と新羅は言った。二人の顔は暗いままだ。
「彼がこれから力を使う事で、彼の脳にも身体にも負担がかかってくる。現に今目覚めないのもそのせいだからね。彼が力をこのままこのレベルで使い続けていれば、彼はもう一生目を覚まさなくなってしまうだろう」
彼は、優しいから、と言って、新羅は目を伏せた。
「人のために、これからも力を使い続けるだろう。それは君たちが一番よく解っているんじゃないかな? だから、そんな無茶をさせないために鍵をかける。力が使えなくなる訳じゃない。彼を『生かす』ための措置だ」
「……今の帝人は、どうなんですか」
正臣が声を絞り出した。新羅の顔は暗い。
「脳波は正常、電脳も少しショートしかけてたけど、さっき手術が済んで交換済み。ただ、精神の疲労が酷いのか、ずっと夢を見ているみたいだ。すごく、辛そうな顔をして寝ているよ……」
新羅は俯きながら眼鏡のブリッジを上げた。すぐにでも駆け出していきそうな二人をどうにか押しとどめる。
「待った。とりあえず帝人くんの所に行くのは『鍵』をかけてからにして」
すぐ終わるから、と新羅は研究室へ戻って行った。扉が閉じられると同時に、正臣の拳が近くの壁へと押しつけられる。


「だから言っただろ……馬鹿帝人!」


静雄は静かにその様子を眺め、ゆっくりと壁に身体を預けた。胸ポケットからぐしゃぐしゃになった煙草の箱を取り出し、中の一本を口に咥える。
確かここは禁煙だったはずだ、と一瞬思い出してから、煙草に火を付けた。


サングラスの無い視界は良好だった。何故そこに、帝人が居ないのか。


早くこの目で見たい。
早くこの手で触れたい。
抱きしめたいのに。


何故君は、此処に居ないんだろう。






帝人が目覚めたのは、それから2週間も経ってからの事だった。もう目覚めないかもしれないと言われていたから、帝人が目覚めた事に、正臣も静雄も大層喜んだ。
切り裂き魔事件はその間に収束し、ダラーズからも通常通りに過ごせと通達が来た。
正臣は、杏里とは、あれから会っていない。
次に、どう言う顔をして会えば良いのか、正臣はそればかり考えていた。何時も通り笑いかけてくれるのか、気になった。


帝人と二人で登校途中、杏里の姿を見つける。帝人も気づいて、小走りに駆けて行った。
「園原さん、おはよう!」
「……竜ヶ峰くん……! おはよう、ございます。……紀田くんも」
「……おう」
杏里は変わらなかった。何時もと変わっていなかった。正臣に少し視線を送る。そして、目礼した。正臣はそれで気付く。
(解った、杏里がちゃんと俺達に話してくれるのを信じて、待つよ。俺も、帝人も)
二人がそろって歩くその背中を見ながら、正臣は胸中で一人ごちた。






「切り裂き魔事件」のお話でした。帝人と正臣と杏里ちゃんの関係を書きたいと思ったのでここで絡めてみました。この3人組大好きなので……!
あと静雄は加入したばっかりなのでまだ帝人べたぼれ状態です。いつもの事とか言うなー(←
こそっと絡んできた臨也さんは、ビルからダイブしてますが人形なので無事です(笑
色々詰め込んだらやたら長くなってしまいましたほんとすいません。
お付き合いくださって有難うございました!
また次の話からは短いのが続く予定です。

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