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獣と戦う、の続きのようなもの。まだ帝人は静雄の部屋に居ます。
臨也さんが出てきます。

臨也さんの目に『彼』は、こう映っているようです。









『現在おかけになった電話は、電波の届かない所にあるか、電源が入っていない為……』


一週間程前から、帝人に連絡が取れなくなった。メールを送ってもレスポンスは無い。そして電話も何時間、何分毎にかけても同じアナウンスの繰り返し。
今まではほぼ毎日のようにログインして来ていたチャットに来なくなったので、連絡を取ろうとしたらこの有様。
自身の情報網を使って調べた所、しばらく家には戻って居ない様だった。そして、一週間前に自分が世界一、宇宙一嫌いな男―平和島静雄―と一緒に居る所を目撃されたのを最後に、それっきり足跡が途絶えた。
「……まーた何か厄介事になってるのかな?」
折原臨也は、新宿の自分の事務所でパソコンに向かいつつ、呟いた。お人よしな帝人が、何かとトラブルに首を突っ込んでいる事は知っているし、首を突っ込まざるを得ない状況にあった事も知っている。ただ、それは本当に少し前の話で、今は平穏無事に暮らしている筈だ。
その筈なのだ。
「……ま、ちょっと暇つぶしに、見に行こうかな?」
臨也はパソコンの電源を落とすと、携帯を手に事務所を出た。




臨也は人間が好きと豪語しているだけあり、人間観察も常に欠かさない。その観察の最中に見つけた「竜ヶ峰帝人」という人物は、とても自分の心を惹く人物だった。
普段は極々普通の、どこにでも居るような―若干頼りない―少年ではあるのだが、その実の姿は「ダラーズ」というカラーギャングの『創始者』であった。創始者の話はダラーズ内では必ずと言って良いほど話題に上る。だから、自分も少し調べた事があって、帝人にたどり着いたものの、いまいち確証が得られなかった。だが、ある事件をきっかけにして、帝人はその片鱗を見せ、臨也を喜ばせた。
(ああ、この子はなんて面白い子なんだろう)
それから臨也は事あるごとに帝人にアプローチした。話につき合わせたり、お茶につき合わせたり、池袋散策につき合わせたり、チャットで話をしたり。
顔をあわせる度に、色々な彼が見える。楽しい。臨也はそう思っていた。
帝人が静雄と『恋人関係』にある、という情報を掴んだ時は、臨也は声を上げて哂った。池袋の喧嘩人形、そして、自身の一番嫌いな人間である静雄と、ダラーズの創始者、そして自身の一番好きな人間である帝人が、一緒になるだなんて。幸せになれるとは思えなかった。
遠くから彼らを見るたびに、破滅の音が聞こえてくるような気がしていた。


静雄の暗い部分を知っていたから。
帝人の冷たい部分を知っていたから。


両方の事を知りすぎていたから、その先に幸せなんて、臨也の目には見えやしなかったのだ。




「行ってらっしゃい、静雄さん」
「ああ、今日もちょっと遅くなると思うから、眠くなったら先に寝てろ」
「大丈夫ですよ。昼寝だってできるんですから、待ってます」
「……分かった」
静雄は手を出して、一瞬躊躇してから、そっと帝人の頭を撫でた。帝人は微笑む。その顔は青白くて、儚げな微笑は、帝人を更に小さく、細く見せていた。
バタン、と玄関の扉が閉められた。そしてその後に、ガチャンガチャンと重い音が重なる。帝人はその音がむしょうに怖くて、しばらく耳を塞いでその場にしゃがんでいた。そして、しん、と静寂が戻った所で、立ち上がり、リビングへと移動する。


これが、静雄の部屋に囚われてからの、帝人の一日の始まりだった。


静雄が起きるまでベッドの中に居て、それから静雄と共に起き、静雄が仕事に行く時は、玄関まで見送る。そして、玄関の外での物音―多分、錠でもかけているのだろう―を震えながらやり過ごし、静雄が帰ってくるまでをリビングかベッドで過ごす。それが帝人のこの一週間の行動だった。同じ事の繰り返し。
静雄の家にパソコンは無くて、自分の携帯も無くしたままだったから、暇を潰すものはテレビか、自分の鞄の中に入れていた教科書の類、もしくは静雄の家にある数冊の雑誌や本、それぐらいしか無くて、自然とやる事は限られてくる。
最近とても身体がだるくて、動く事も億劫になってきていたから、帝人は一日の殆どを寝て過ごしていた。


そうしていれば、何も考えなくて、済むからだ。


静雄は相変わらず自分を貪るように抱く。その行為が、静雄と自分を繋ぐ全てなのであれば、そうしたらいい。そうして欲しい。帝人はそう思って―言って―身体を差し出す。静雄はそれを受ける。辛そうな、顔をして。


(どうしたら、静雄さんも、僕も幸せになれるんだろう、か)
つい最近までうまくいっていると思っていたのに。どこで噛み合わなくなってしまったのだろうか。


静雄は見えない繋がりを見えるようにしたいと求めていて、自分は、そんな繋がりが無くても、静雄と繋がっている事をどうにか伝えたい。


お互い考えている事は同じなのだ。


心を繋ぎ―縛り―たい。




「おっと」
「……臨也ァ、テメエ、此処で何してやがる」
池袋のど真ん中で二人は出会ってしまった。静雄の額に青筋が浮かび上がる。静雄は、サングラスを外すと、臨也を睨み付けた。
「池袋には来るなって、言ったろうがよぉ」
「そんな事言ったってさ、俺だって用事があるわけだよ。いちいちシズちゃんにそう言うの報告する義務なんて無いでしょ?」
「うっせえ、死ね!」
静雄がその場にあった標識を引っこ抜いて、構えて投げる。臨也はそれを軽く避けた。
「そういやあさあ、帝人くん、どうしたの? 今日は一緒に居ないの?」
臨也はコートのポケットに手を突っ込んだまま尋ねる。帝人と言う言葉に反応し、静雄が止まった。臨也はにやにやと笑顔を崩さないまま、続ける。
「どうしたんだろうねえ? 最近チャットにも来ないからさ、皆心配してるんだよ。シズちゃん仲良かったんでしょ? 知らないの?」
「……知らねえよ!」
「ああそう。一番仲良いって聞いたから知ってると思ってたんだけどなー。知らないんだあ……」
ふうん、と臨也は頷いた。その顔はまだ哂っている。静雄はそんな臨也を黙って睨み付けた。舌打ちすると、煙草を銜え、臨也に背を向けて去っていく。


「相変わらず馬鹿だなあシズちゃんは。そんな事したら知ってます、って言ってるようなものじゃないか」




臨也はマンションの前に立っていた。静雄の部屋のあるマンションの前だ。
帝人が最後に目撃されたのが此処。念の為と思いマンションのゴミ捨て場を覗くと、未回収のゴミの中に帝人の携帯電話を見つけた。壊されてはいないが、さすがに充電が切れていた。
その携帯電話をコートのポケットに仕舞う。そして、静雄の部屋の前まで来た。
「うっわあ……こーりゃ病んでるな、シズちゃん」
臨也ですら絶句するような、静雄の部屋の玄関には、ドアノブにチェーンが何重にも巻かれ、そこに錠が何個もついている。チェーンは窓の格子に繋がっていて、中からは開かないだろうし、外から開けるのも一苦労だろうと思われた。
「さてさて、お姫様は居るのかな?」
一応チャイムを鳴らしてみる。が、多分出てこないだろう。ただ、中に人の居る気配はする。仕方なく、ドアをノックして声をかける。
「おーい帝人くーん、居るー? 居たら元気よく返事ー」
まあ元気なんて無いかー? と声をかけて、何度かドアをノックした。暫く経ってやっと、ドア越しにか細い声が聞こえた。
「臨也……さん?」
「おっと、ほんとに居たのか、帝人くん、大丈夫なの?」
「まあ、何とか……」
臨也はドアに背を預けて立った。多分帝人もそうしているのだろう。ドア越しに帝人の気配を感じた。
「監禁かあ、シズちゃんも思い切った事するね」
「監禁と言うほどでもないですよ。手足の自由はあるので軟禁でしょうか」
「それでも、パソコンとか無いんでしょ、その部屋。退屈で死ぬね俺なら」
「今は寝る事が楽しみですかね、ずっと寝てます」
久しぶりの静雄以外との会話に、帝人の口は饒舌になっていた。臨也はため息を吐きながら、尋ねる。
「どうしてこうなっちゃったの? まあ、大体予想はつくけど」
「ちょっとした二人の意見の相違です。恋人同士には良くある話ですよ」
「軟禁が良くある話?」
「それは無いですけど」
臨也は背にしているドアに手の平をそっと当てた。
「……俺は君を今ここから出してあげられるけど、それは今必要な事?」
臨也が尋ねる。帝人が息を呑む音が聞こえた。少し間を空けてから、帝人は答えた。
「いえ、必要ありません。これは、僕達の、問題です」
「……解った。君がどうあの猛獣を手なづけるか、お手並み拝見するよ」
「違います」
「どう違うの?」
「どうやって檻に入れるかを、考えているんです」
ハッ、と臨也は楽しそうに笑った。
「そうかそうか君もシズちゃんも同じ考えなんだね。だから君はおとなしく檻の中で待っているんだ。シズちゃんが入ってくるのを!」
「……その通りです」


帝人と静雄の想いは同じなのに、少しの考え方の違いで何時まで経っても平行線のまま交わらない。帝人は考えた。ではどちらかに併せれば良い。理解してもらえないならば、いっその事どちらかと同じ考えになればいい。そう思って、帝人は静雄の言うことを全て聞いてきた。そうする事で、静雄が弱る事を願っていた。根が優しい静雄の事だ、帝人が何でも自分の我が儘を聞いてくれる事に、良心の呵責が起こってくることだろう。そうすれば、静雄の心は弱る。そして、自分が待っている檻に入ってきてくれる。檻―そう、自分が思っている事を、きちんと聞いてくれるようになる。
今の静雄は、自分と帝人を繋ぎ止めておくことだけに必死で、他人の―特に帝人の―意見が聞き入れられない状態にあるのだろう、と帝人はこの一週間で考えていた。多分自分と同じで今までこんな恋愛をしたことがないのだろう。自分に自信が無くて、余裕が無いのだ。




「気の長い根気比べだ事」
「僕も静雄さんも結構頑固ですから、長丁場になりそうです。そういえば学校の方、どうなってました?」
「ああ、君が来れない事、園原さん、だっけ? 何かちゃんと理由つけてくれてるみたいだよ?」
それなら良いです、と帝人は素っ気無く答えた。臨也はため息を吐く。
「難儀な性格してるね、君達は」
付き合ってられないや、と臨也はドアから身体を離した。
「ああそうそう、君の携帯見つかったよ。ゴミ捨て場に落ちてた。一応俺が預かっておくけどいい?」
「構いません。今の僕には必要無いものです」
「解った。じゃ、また」
臨也はそう言って玄関のドアをこん、とひとつ叩くと、その場を離れた。




夕暮れ時の路地を、歩く。
(唯の痴話喧嘩じゃないか、馬鹿らしい)
結局あの二人は、深く深く愛し合っていると言う事だ。ただ、ちょっと色々な事に盲目であるだけの。そういえばそんなカップルをもう一組、知っている。あれと少し違うベクトルの、しかし所謂バカップルというやつだ。
(ああでも早く決着つけてくれないかな)
臨也は池袋駅に向かって歩く。


(帝人くんが居ない池袋は、つまらないからね)








軟禁状態にある帝人を心配して臨也がやってきましたが、結局おまえらバカップルなんじゃん?と思って馬に蹴られる前に退散した、という話でした。
タイトルの英語は「囚われの姫君」。臨也さんの目には、帝人は囚われの姫君として映っていたのですが……しかし姫、結構したたかで逞しいです……。


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