BLとか腐女子っぽいネタとか小話の倉庫になります。
(また、やってしまった……)
帝人は白い天井をぼんやり見ながら自己嫌悪に陥った。
自分が居るのは白いパイプベッドの上で、天井を向いて寝かされていた。両手はご丁寧にもベッドの端に手錠で繋がれている。電子ロックではない、アナログな鍵の手錠だ。
首を動かして辺りをうかがう。部屋は余り広くなく、すぐ傍に窓があるがカーテンが閉められていた。遮光カーテンのせいか、部屋が薄暗い。
池袋で―局地的に―有名な帝人は、往々にして襲われる事が多い。その場に正臣や静雄が居れば別だが、帝人一人では大抵対処ができない。その場合はひたすら逃げるか、ところどころにあるダラーズの息のかかった建物に逃げ込むか、とにかく逃げるしかない。
ただ今回のように、そっと忍び寄って薬を嗅がされたとあっては話は別で、眠らされた帝人は抵抗も出来ずそのままこの、何も無い殺風景な部屋に繋がれてしまったという訳だった。
誘拐される、されかける事は珍しく無いとは言え、自分の不甲斐無さが情けない。
(手口が鮮やか過ぎる……ずっと僕の事を監視していたのだろうか)
今日は正臣と一緒に学校から帰る途中、少しばかり正臣が離れた隙を狙われた。正臣を呼ぼうと回線を繋ぐ前に意識が飛んでしまったので、どうする事もできなかった。
何時もの様に緊急回線を使って正臣か静雄を呼ぼうと、携帯端末無しで、電脳に直接働きかける。
じり、とノイズが走った。回線は開いたものの、知らない顔の像が結ばれた。
「……どちら様ですか」
「初めまして、竜ヶ峰、帝人くん」
その人物は、自分の名前を呼んだ。そこまでは想定内。
「いや、ダラーズの創始者様、と言ったほうが良いのかな?」
想定外の台詞。帝人は目を見開いた。そのことを知っているのはごく一部―セルティと新羅―だけのはず。
「何故それを、知っているんですか」
「まあ、職業柄、かなあ」
データ像の「彼」は、くっくと笑った。
「俺の名前は折原臨也。俺もダラーズの『人形』だよ。今は情報屋をやってる」
「僕をここへ連れてきたのは貴方ですか?」
「そうだよ。まあ、運んできたのは別の人形だけど、首謀者は俺かな」
ぷつり、とそこで通信が切れた。そして、帝人の視界の端のドアが開く。
「いらっしゃい、俺の城へ」
「……ずいぶんと、小さいお城ですね」
帝人は眉を顰めた。緊急回線をもう一度開こうとするが、今度は繋がらない。
「君の使ってる回線は全て塞がせてもらったよ。ダラーズを通さない回線も全部ね」
試そうとした方法が全て駄目だと解って、帝人は小さく舌打ちをした。
「ブレイン型ですか?」
「うん、一応」
臨也は楽しそうに笑った。
「君と話がしたかったんだ。だから、二人きりになりたかった」
「……だからって、こんな事しなくても」
がちゃ、と手錠が鳴った。鉄の触れている部分が擦れて赤くなっている。地味に痛い。
「だって、逃げられたら困るもの。ただでさえ俺はダラーズの中では厄介者として嫌われてるのに」
君にまで嫌われたくないからね、と臨也は苦笑した。
嫌うも何も、帝人は臨也の事は何一つ知らない。今日初めてこのような最悪の出会いをし、名前を聞いたばかりだ。
「貴方の事は、よく……知りません」
「これから知ってもらうさ、一つ一つね」
臨也は帝人の手錠に、小さな鍵を差し込んだ。かちりと音がして、重たい手錠が外れる。帝人は手首を押さえた。赤く擦れている。
「……俺が君の事を、全て知っているように、君にも俺の事を全て知ってもらわないとね」
臨也は微笑んだ。その顔はとても綺麗で帝人は一瞬見惚れてしまったが、すぐにぞっと背筋に悪寒が走る。
臨也の微笑みは綺麗過ぎた。その微笑みが、怖かった。
臨也は帝人の隣に腰掛け、話し出した。帝人は逃げる事を諦め、臨也の話に耳を傾ける事にした。
臨也の話は帝人の心を惹いた。非日常に憧れ、人形遣いになった帝人にとって、臨也の話はとても魅力的なもので、だんだんと臨也の存在自体に心惹かれるようになった。
「で、今主は居ない。俺はダラーズの監視下に置かれて、主候補を待っている最中さ」
「……臨也さんが、静雄さんとペアだったなんて」
「そういえば君シズちゃんと契約してたよね? それに、紀田正臣くんとも」
「はい……」
「ふうん……」
臨也は目を細めた。自分が一番憎んでいる相手と、自分が壊しかけた『元人間』。そんな二人が、彼の元に居る。臨也はにやりと笑った。面白い。帝人の存在は、臨也にとってとても面白いと思えるものだった。
「そうだ帝人くん、見せてよ」
「え。何をですか?」
「【皇帝】」
帝人が一瞬肩を震わせた。臨也は念を押すように、もう一度ゆっくりと言った。
「帝人くんの力を、見せてよ」
帝人の力はこの目で二回も見ているし、それにダラーズのデータベースに帝人の能力【皇帝】は「Sクラス」と機密事項で記されている。
ただ臨也が見たいというだけで使用していいような力ではないし、大きな力には必ずリスクが伴うもので、帝人の負担も大きいものだろう。
でもそれでも、臨也はこの目で、この自分の身体で帝人の力を味わいたかった。一度目の発動の時も、二度目の発動の時も、自分はその力の及ばない所に居た。その力に触れる事は出来ず、ただ見ているだけだった。しかし強烈なプレッシャーは感じた。それを自身で感じたい。臨也はずっとそう思っていた。
「俺に使ってみせてよ。俺を、屈服させてみせて」
臨也は哂った。帝人が目を見開いた瞬間、肩を強く押し、ベッドに帝人の身体を倒す。軽く帝人が呻いた。
「……っ、臨也、さん……っ!」
「さあ、どうする? このまま俺に犯されて嬲られて斬られて人間として再起不能にされるか、『力』を使って俺に止めろと命令するか」
どっちが良いだろうね? 臨也は優しい笑みを浮かべた。起き上がろうとする帝人の両手首を片手で抑え、ナイフを取り出すと帝人の首、頚動脈の部分に当てる。ひやりとした感触に、帝人がごくりと喉を鳴らした。
「……あの力は、今は『封印』されているんです」
「どうして?」
「……影響が、強すぎるので……」
自分の意思である程度のコントロールは出来るが、それもギリギリの線での話しだ。何度も使えば慣れて制御も出来るようになるのかもしれないが、使えば使うほど帝人の脳と身体が危うくなる。先日も、眠ったまま目覚めなくなるかもしれないと言われ、釘を刺されたばかりなのに。
「今自分の意思で、使う事が出来ません」
「どうすれば使えるようになるの?」
「僕がとても危険な目にあうとか……命の危険に晒されるとか、そういう、僕自身に危険が迫ったとき、です」
臨也は紅い人工水晶をきゅう、と細めた。綺麗な形の眉が顰められる。
「これは君にとって危険な状態でないわけ?」
両手を拘束され、首にはナイフの刃。少し刃を滑らせれば、簡単に頚動脈が切れて血が吹き出る。そのまま御陀仏になる可能性だってあるのに。
「今の臨也さんには、殺気がありません、から……」
大丈夫なんだと、思います。帝人はそう呟いて、黙った。臨也はきょとんとした後、はじかれたように笑った。
「君ねえ、お人よしにもほどがあるよ!」
確かにナイフはただの脅しで、切りつけようとは思っていなかったし、彼の力を見れたらそれで良かったから、帝人の身体をあれこれするような事も思っていなかった。言葉で揺さぶって、力を見れればそれで良し、見れなければ、もう少し踏み込んでみるつもりではあったが、これだけ信用されているとは思わなかった。
「俺が急にこのナイフを首に差し込んだらどうするつもりだったの」
「それはそれ、僕の見る目が無かったということですよ。一応これでも人形遣いですから、人形を見る目はあると思っていましたし」
「ハハッ! やっぱり面白いね、君」
臨也はナイフを帝人はから離すと、ぺろりとその刃を舐めた。
「でもさァ、やっぱり俺は君の全てを見たいし、感じたいんだよねェ」
瞬間、爆発的に膨れ上がった殺気と共に、臨也がナイフを振りかぶった。咄嗟に帝人は首をひねって避ける。頬が少し切れて、血が流れた。顔のすぐ横にナイフが突き立っている。
「ほおら、簡単に信用しちゃいけない奴だって居るって事だよ?」
臨也はにやにや笑っていた。怖さと怒りで、帝人の身体が震える。
「そんなに言うなら、聞かせてあげますよ、何人も抗えない【皇帝】の命令を」
帝人がゆっくりと目を閉じた。そして、同じようにゆっくりと開ける。瞳が蒼く光っていた。何かを感じ取るように瞳を瞬かせ、臨也をじっと見つめる。
『……識別コード、ブレイン型【Iz】、オリハラ、イザヤ』
「おや、俺のコードは教えてないよね?」
「静雄さんとペアを組む予定だったと聞いたので、検索して解析しました。静雄さんも派生コードは付いていなかったし、だったら初期に作られた型だから、静雄さんと同じ時期に作られた素体であれば臨也さんもコードは派生していないと思って。ペア機で作ろうとするならコードも似ている筈と」
「……成程」
臨也は笑った。帝人はすう、とその蒼い瞳を細める。
『【Iz】折原臨也の情報権限を、全て僕の元に』
その声に臨也がぴたりと止まった。【皇帝】の命令が効いてきている。
情報権限を全て奪われるという事は、自身の活動も出来なくなってしまうということだった。
「本気で止めに来たね」
「そのつもりですから」
帝人が臨也の手を引く。一瞬、臨也の注意が殺がれた。帝人の蒼い瞳と、臨也の紅い人工水晶の視線が合う。
「……っ!」
臨也は息を呑んだ。臨也の意識が帝人の意識に乗っ取られるイメージ。自身を動かす情報が、奪われていく。
「さすがだね、【皇帝】」
「臨也さんもかなりの情報量ですね。初めて見ました、こんな大量の情報持ってるブレイン型」
苦しそうに、しかし余裕があるふりをして笑う臨也。
冷たく淡々と、しかし愉しそうに哂う帝人。
面白い、面白い、面白い!
二人は哂った。
【皇帝】の命令で、臨也のほぼすべての情報使用権限が帝人に移った。
臨也はすでに諦めた様子でベッドに横たわったまま弱々しい笑みを浮かべている。人工水晶には何時もの光が無い。
「負けた、俺の負けだよ帝人くん」
ひらひらと臨也は力無く手を振った。帝人の瞳は冷えて蒼く光る瞳のまま、じっと臨也を見降ろしている。完全に体勢も態勢も逆転していた。
「これが、貴方が欲しがっていた力です、臨也さん」
臨也の頬を帝人は撫でた。両手で頬を包むようにして、じっとその端正な顔を覗き込む。キュ、と臨也の人工水晶が鳴って紅い光を取り戻した。代わりに帝人の瞳から蒼が消える。
「……詰めが甘いね」
「もう十分でしょう?」
臨也は起き上がった。臨也の情報使用権限が、帝人から臨也に戻されたのだ。
「貴方が降参したから、もう終わりです」
「また俺が変な気起こしたらどうするの?」
臨也の手が帝人の腰を抱き寄せた。力の抜けた帝人はぺたんと臨也の腿の上に座り込んだ。酷く頭が痛む。
「その時は、その時です」
「まったく甘いなァ、帝人くんは」
力の無くなった小さな身体を、抱きしめた。簡単に自分の腕に収まってしまうようなこんな小さな身体に、先ほどのような激しく、しかし冷たい感情と力が秘められている。
面白い、実に面白い。竜ヶ峰帝人は、人間が好きな臨也が、唯一「個」として好きな人間として認識された。
「じゃあ俺の首に枷を付けると良い。契約、しようじゃないか」
「……どうしてそうなるんですか?」
「俺は君の事がとても好きになった。君のこの力もとても好きだ。だから君と一緒に居たい。傍にシズちゃんがいるのはこの際我慢しようじゃないか。君は俺が傍に居る事で、俺が何時また妙な気を起さないか監視することができる。次、俺が君を殺そうとしたら、その時は遠慮なく、君の権限で好きにするといい」
どうだい? と笑顔で尋ねられた。どう、と言われても、今の帝人はもうすでに考えがまとまらないぐらい疲弊している。とにかく脳を休めたい。臨也の言うとおりにして、成るように、成ればいい。そう思って、帝人は口を開いた。
『……【Iz】折原臨也と契約を、結びます』
「……これは感謝の至り」
臨也はにやにやと笑っていた。これを狙っていたのかもしれない。うまく丸め込まれたと帝人は思ったが、もう契約を結ぶしかない。
「これから宜しくね、帝人くん」
臨也は帝人の頬から流れていた血を、顔を寄せてぺろりと舐めた。そしてそのまま、帝人に口づける。血の味と、唾液が混ざって妙な感覚だ。帝人はとろんとした目で臨也を見つめた。
臨也は相変わらずにやにやと笑みを浮かべていた。その笑顔に、なんだか妙にイライラした。
「帝人! お前大丈夫か今どこだよ!!」
臨也に回線を全て繋げてもらい、携帯端末を使用した緊急回線で正臣と連絡を取る。大きな声の第一声に、帝人は眉を顰めた。
「紀田くんうるさい、頭痛いんだから静かにして」
「お前無理やり鍵開けただろ! まだ制御できるレベルだったからよかったものの……!」
「自分で鍵開けるのはあそこまでが限界だって、良く解ったよ」
「だーかーらー! お前が勝手に開けられないようになってるの! それを無理やりこじ開けやがって無茶すんなコンチクショー!」
「……とにかく僕は無事、頭痛いけど……」
ふー、と一息ついてから、帝人はまた口を開く。
「今から……帰るよ」
「解った。迎えに行く」
「その必要は無いよ」
正臣と帝人の通信に、臨也が割り込んだ。臨也の顔を見た瞬間、正臣が一瞬だけ息を詰めたのが解った。
「……臨也さん」
「俺がちゃんと帝人くんを送っていくよ、いや、家まで一緒に帰るから」
「どういう、意味ですか?」
「俺と帝人くんは、契約したからね。何時も一緒に居なきゃ」
「なっ……!?」
「そりゃどう言う意味だ、臨也よォ……!」
また回線に割り込んだ人物が居た。今度は静雄だ。
「おやシズちゃん、久しぶり。どうもこうも、そのままの意味だよ」
「……何企んでやがる!」
「企むだなんて酷いなあ。純粋に帝人くんに、帝人くんの力に惚れて俺が契約したいって言ったのさ」
静雄が何か言おうとしていたが、臨也が回線を強制終了させた。正臣と静雄の映像が消える。
「さあ、帰ろうか帝人くん」
俺達の新しい城へ。
臨也はにっこりと笑った。その顔は綺麗で憎らしくて、でも、嫌いにはなれそうに無かった。
どう返していいか分からなくて、とりあえず帝人は目を閉じて、意識を手放した。
臨也さんとの出会い&契約編です。「これは書いときたい話」のひとつ。
長くなってすいません。
久しぶりにシリアスな話書いた……脳が疲れました←
帝人をぎりぎりまで追いつめて、丸めこむそんなイメージです。
しかしまず監禁とか静雄と手口が一緒なことに今気づきました←
やっぱ似てるのかなこの二人w
新しく派生コードの話が出てきましたが、オリジナルの素体を元に作られている人形達のコードが派生コードとなります。
例えば九瑠璃と舞流は臨也を元に作られているということになっているのでコードが派生して【Iz-ku】と【Iz-mi】になります。
因みに幽は素体が同じというだけで静雄を元に作られているわけではないので、派生コードではありません。
ややこしくてすいません。また設定にも書き足しとかねば!なんとなくフィーリングで読んでいただいたら大丈夫ですw
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