BLとか腐女子っぽいネタとか小話の倉庫になります。
屋上で昼食を取りながら、正臣と帝人が何時もの様に会話をしている。
「切り裂き魔?」
「そう。テレビでも話題のあの切り裂き魔、だ」
もぐ、とサンドイッチを頬張りながら正臣は話し出した。同じくサンドイッチを齧りつつ、帝人は頷く。
「そう言えば、朝言ってたね、うちの生徒が何人かやられたって」
「ああ、それだけじゃない、ダラーズのメンバーも何人かやられてる。結構高クラスの奴らもやられてるみたいだから、また正式にダラーズから依頼があるかもな」
依頼、というのは帝人がダラーズから受ける「仕事」で、帝人は能力の高さを買われ、池袋の自治を任されている。ダラーズ内で何か起こった場合、ダラーズから「依頼」され、帝人や、その他専門機関が動く事がある。
「それならもう来てる。でもさ、何でもかんでも僕に回されても、困るんだけどな」
帝人は眉を顰めながら、携帯端末のメール文を正臣に見せた。ダラーズからの依頼がすでに来ていて、警戒を強めろとのお達しである。
「警戒っつったって、この広い池袋を帝人と俺と静雄さんでどうしろって言うんだろうな?」
「監視カメラのサーバーに入り込めれば簡単だけど、警察と区が許してくれるかな?」
「さーな? 上もその辺適当だから怪しいよな」
「勝手に入ってもいいならそうするけど、後で面倒だよね」
どうしようかな、と帝人は牛乳パックに刺されていたストローの先を噛んだ。帝人のそんな様子を見ながら、正臣はぽんぽんと軽く帝人の頭を叩いた。
「まー、とりあえず見える範囲でやってこうぜ。初っ端から飛ばしすぎると後でへたるからな」
うん、と帝人は頷く。その後は他愛無い雑談をしながら食事を続けた。
屋上のドアの陰に、杏里が居た。二人の会話を聞いて、踵を返す。
二人はそれに気付かなかった。
誰かに見られているような気がする。
静雄はそう思って振り返った。しかし、誰も自分を見ている様子はない。
歩き出す。しかし視線を感じて、また立ち止まる。そうすると、視線は消える。
「……」
静雄は戦闘モードをオンにした。この方が良く「視える」からだ。
そのまま歩き出す、視線を感じた。気づかない振りをして、路地へ入る。視線が着いて来る。そして袋小路へたどり着き、振り返った。
「おい、居るんだろ?」
誰も居ない、しかし、まだ視線は感じるのだ。静雄はサングラスを外した。黄緑がかった人口水晶が、すいと細められる。
「出て来いよ!」
挑発するように、吠える。傍の塀から姿を現したのは女性だった。
(女!?)
ゆらり、と近づいてきた女性は、手に小ぶりのナイフを持っていた。それをものすごいスピードで振りかぶって、静雄に突き立てようとする。その腕を弾いた。軽く触れた感触から、女性は人形だとわかる。
(何で人形が俺を襲ってくんだよ)
女性の見開いた目は紅い。一人同じような瞳をした男を知っているが、それとはまた違った紅。
(こいつが噂の切り裂き魔ってやつか?)
しかし朝ニュースで見たのは男の切り裂き魔の話だった。目の前に居るのは女性だ。模倣犯なのか本当の犯人なのか。
(とりあえず一旦気絶させて……!)
しかし相手も人形なので、身体能力が高い。しかもパワー型ではないはずなのに、やたらと戦闘に慣れている感じがする。
力加減を間違うと人形のボディを壊してしまうので、静雄も攻めあぐねていた。
「……平和島、静雄」
女性がぽそりと、自分の名前を呟く。開いた目がさらに紅く、染まる。
「愛してる」
余りにもこの場に似つかわしくない言葉に、一瞬だけ静雄の動きが止まる。その瞬間、女性が手に持っていたナイフが静雄の肩に突き刺さった。痛みが走るが、小さなナイフだったために傷は浅い。ナイフを引き抜くと、それを投げ捨て、女性の腕を引っつかみ、首を手刀で打つ。人形は動かなくなった。
「何だったんだ、一体」
人形をその場に転がし、静雄は肩を押さえた。自己修復で回復できるぐらいの傷だったので、そのまま放っておく。
(訳わかんねえ)
頭を整理するために、静雄はとりあえず煙草を咥え、火をつけた。
少女と男が話しをしている。二人の瞳は紅い。
「そうですか、平和島静雄さんに会いましたか」
「はい、母さん」
「ダラーズの事は……何かわかりそうですか」
「まだわかりません」
「……解り次第、教えてください。お願いします」
少女が頭を下げて立ち去った。男ははっとなって、辺りを見回し、頭を掻いた。
「そうですか、そんな事があったんですか」
「……明らかに俺を狙ってた。それに何で切り裂き魔に狙われるのかもわからねえ」
「ふーん……」
帝人はノートパソコンを弄りながら、静雄の話に耳を傾けていた。そして眉を顰めたまま、ぽすりと静雄の胸に後ろ頭を預ける。
「て言うか、そう言うときは一人で行動しないで呼んでください」
「あ……、悪い」
帝人の腰に回された静雄の腕に力が篭った。その手に自分の手を重ねて、帝人はゆっくりと静雄に言い聞かせるように呟く。
「静雄さんは強いから、一人でも大丈夫だって思ってるかもしれませんけど……僕は心配してるんですから」
僕の居ない所で、壊れたりしないで。そう呟いて、帝人は静雄の手を、ぎゅっと握った。
解った、と声無く呟いて、静雄もその小さな手を握り返した。
それから数日は、静雄の周りは静かだった。例の視線も感じない。ただ、切り裂き魔の事件はだんだんと件数が増えていった。
「ふーむ、これは本腰を入れて探る必要があるなあ」
正臣がそう言って、眉を顰めた。帝人も頷く。
「よし、そしたら俺は別口で探ってみるわ。昔の知り合いとかにも情報聞いてみる」
「一人で大丈夫?」
「おう。むしろ危ないのはお前か静雄さんだろ?」
正臣は校門の傍を指差す。その先には静雄の姿があった。
「昼休みに連絡しといた。とりあえずお前ら一緒に行動してろ。何かあったときそのほうが安全で安心だしな」
悔しいが静雄さんにならお前を託せる。と正臣は帝人の肩を抱いて、耳元で囁いた。
「この件に関してたぶん俺はノーマークだ。だから動くなら俺の方がいいだろ。むしろお前らが派手に動いて囮してくれてた方が楽でいいわ」
「……まあね。でも、危ない事は止めてよね」
心配そうに見つめてくる帝人の頭をぽんと叩くと、正臣はにっこり笑った。
「だーいじょうぶだって! 俺を信じてろ、帝人!」
軽く帝人の頬に口付けると、真っ赤になって立ち止まった帝人の元を離れ、静雄に近づく。
「静雄さん、宜しく」
「解った」
軽く拳を触れ合わせ、正臣は街へ、静雄は帝人の元へ歩いた。
「……とりあえず、その辺見回って帰りましょう、か」
帝人と静雄は揃って歩き出した。正臣が向かって行った方向とは反対へ向かう。
事件はたいてい夜に起こる為、それまで時間を潰す。ぶらぶらしているうち、夕焼けが過ぎて、夜の帳が下りて来た。
「……何か、感じますか?」
「……ああ」
静雄がサングラスの奥で人口水晶を細めた。また、あの視線を感じる。しかも、今度は複数だ。
「すぐ動けますか」
「行ける。でも広い場所の方がやりやすいな。人数が多い」
「……西口公園まで、行きますか」
「そうだな……」
二人はそのまま歩き出す。視線は、ずっとついてきた。しかも、人数が増えてきている。
「おいおい、マジかよ」
静雄が笑った。どんどんと視線の数が増えてくる。帝人もぴりぴりとした何かを感じとっていた。
「静雄さん、これって」
公園へ踏み込む。そして、少し歩いたところで立ち止まった。
「……囲まれた、か」
静雄はサングラスを取った。帝人と背中合わせに立つ。紅い目をした人形と人が入り混じって、皆手には刃物を持っている。戦闘モードをオンにして、辺りを見回す。人口水晶に映し出される情報は、様々な型の人形と、普通の人間が居る事を表していた。人形は最悪壊しても良いが、人を殴れば殺してしまうかもしれない。これだけ入り混じられては、力の加減が追いつかない。静雄は奥歯を噛んだ。
「人が、混じっていますね」
携帯端末に送られてきた情報を見て、帝人も眉を寄せた。どうするか考えているときの顔。
帝人は、目を閉じた。その顔は、苦渋の表情。目を開く。その瞳は蒼い。
「……静雄さん、すいません。アレ、やります」
「帝人、お前」
「ギリギリまでやります。だから、後お願いします」
帝人は笑った。静雄が何か言おうとしたが、それを遮って、帝人の声が響く。
『此処に居る、人形達に告ぐ』
帝人が2回目の【皇帝】を発動したときのお話です。
まだこの時は自由に使えてました。この後から鍵がかけられるわけです。
静雄との共闘を書きたかったので静雄と行動させました。後編に続きますー!
正臣はもうちょっと後でまたちらっと出てきます。
しかしうちの帝人は戦闘となると無茶ばかりしよる←
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