BLとか腐女子っぽいネタとか小話の倉庫になります。
『此処に居る、人形達に告ぐ』
凛とした声が響く。
『僕に従え』
【皇帝】の命令が、響く。
静雄は視線を彷徨わせた。人波の中に帝人の『声』を聞いて、立ち止った者たちがいる。それは『人形』だ。自分は今帝人の支配下に居ない為、自由に動く事が出来る。
止まった人形は帝人の制御下に居るので相手にする必要は無い。自分と帝人に迫る『人』だけを選別して、静雄はその腕を振るい、手加減をして沈めていく。
「……っ!?」
『人』の中に『人形』が混じり始めた。帝人の制御が追いついていないのだろうか、背中に護っている帝人は、相変わらずその蒼い、冷えた目でじっと人の波を見続けている。ただ、その表情に少し焦りが見えていた。
「帝人!?」
「……」
静雄の声に、帝人は気がつかない。
(まずいな、生体情報だとは思わなかった。書き換えが追いつかない)
今いる人と人形を操っているものは『生体情報』と呼ばれ、文字通り生きている情報である。情報を植えつけた者しか書き換えも消去も行うことが出来ない。他の者が書き換えや消去を行おうとすると、生体情報の存在データが上書きできないように書き換えされる。
(携帯端末に情報を通してたんじゃ、間に合わないな……)
すでに帝人の携帯端末も、電脳もフル稼働で演算を行っている。生体情報の存在データが書き換えをするまえに先を読んで上書きもしくは消去を行う。
ただ、数が多すぎる。以前は自分が操るのみだったが、今回は生体情報を相手にしなければならない。
(仕方ない)
帝人は携帯端末に情報を送る事を止めた。一度目を閉じる。静雄の熱を背中に感じる。
(一人じゃない、出来る)
帝人の瞳が、さらに蒼く光る。
『平伏せ』
痛いほどの静寂が辺りに訪れた、ような気がした。人形達が一斉に跪いている。そしてそのままばたりばたりと糸が切れたように地に倒れ伏した。紅い目をした人形達は居なくなり、残っているのは紅い目をした人のみ。
自分の身体が熱くなっていくのを感じる。脳が焼けそうに痛い。
(痛……っ)
片手で頭を押さえた。痛みが止まる事は無い。
今この場にいる静雄以外の契約も何も交わしていない人形達の動きを『無効化』するためには、膨大なデータ量を受け、それを整理、制御しまたそれを人形達に返す事。それを携帯端末を通さずに、自身の電脳のみで行わなければ処理が追いつかない。携帯端末を通すとそれだけ人形へデータを戻すときにタイムラグが生じるからだ。効率化といえば聞こえは良いが、帝人の精神と身体の自由がなくなる。一人では行う事が出来ないが、今は静雄がいる。静雄が必ず自分の身体を護ってくれると信じて、無謀なこともすることが出来た。
「帝人、止めろお前……!」
「大丈夫、です。早く……」
余り長くは、持ちそうにありません。そう呟くと、帝人は奥歯を噛み締めた。そうしていないと立っていられなくなりそうなぐらいに、頭痛が酷くなっていた。
(全力で力出した事なかったけど、さすがにこれはちょっと辛いな……紀田くんの言う事、ちゃんと聞いておけば良かった)
「帝人よ、お前ね、何でもかんでも自分のその『力』だけで何とかできると思うなよ」
「どういう、事?」
帝人は病院のベッドの上に居た。傍らに座った正臣は、帝人の顔を覗き込みながら言う。
「奇跡が二度起こるなんて思うな。現実を見て、全ての予測できる対応を考えろ。先を読め。一人で何とかしようだなんて思うな。まず人を動かせ。お前の力の出番が来るのは、それからだ」
「良く解んないけど……」
「お前はその力に頼りすぎてるんじゃないか、って、この間思ったんだよな。お前はその力のせいで、何でも一人で解決できるって思ってるかもしれん。お前のその力は確かに強いよ。全ての人形に干渉できる力なんて早々無いからな。でもな、大きい力にはリスクが伴うものって、解るよな?」
帝人は頷く。正臣は続けた。
「【皇帝】は、その名前の通り、後ろに構えてりゃいいって事。お前がまず考えて、布陣を引いて、その上を俺や、他の人形が固める。力を使うのはそれからだ。考えなしに飛び込んで、あげく力使ってぶっ倒れて、そんなの、王自らが先陣切って歩いてるようなもんだ。たしかに影響力はあるかもしれんけど、それが最善かって言えば、NOだな」
「時と場合による、って言いたいんでしょ?」
「ま、そういう事。そこはお前の判断に任せるけど……無茶だけはしてくれるなよな」
その時の正臣の顔が思い出された。困ったような、諦めたようなそんな表情。少し離れていた間、正臣が何をしていたのかは聞かされては居なかったが、もしかしたら、自分の判断ミスで何か大事な物を無くしたのかもしれない、と思った。帝人が間違った判断をしないようにとずっと気にしているふしがあるからだ。
(紀田くんが僕に何を言いたかったのか解らない、けど)
今のこの敵に囲まれている状況を作り出したのは、自分の判断の結果だ。だから、これは自分の判断ミスで、だから自分で何とかしようと思ったが、力の制御で精一杯で何もできない。
(こうなる前に紀田くんやダラーズに連絡すればよかったんだ。二人で囮になろうだなんて、無茶だった)
静雄が強いからと言って、力だけで対応できるのはダラーズに敵意を持つ人間や人形の場合のみだ。このように一般生活を送っているのであろう人形や人間を相手にするときには、もう少し考えなければならなかったのだ。
全ての場合を想定し、先を読め。正臣がずっと言っていた言葉を思い出す。
(上に立つ事は、難しいよ、紀田くん)
静雄が戦う姿を見ながら、帝人は胸中で呟く。
(でも今の状況は僕が作りだしてしまったようなものだから、責任を取らなくちゃ)
人形の反応が近くに無くなった事を感じて、帝人はふ、と目を閉じる。どうやら増援はないらしい。あとは静雄が『人』の方を片付けてしまえば、今のこの状況は終わる。
人を相手に立ち回る静雄をぼんやりと見ながら、帝人は思った。もう、立っている事が辛い。膝からがくりと崩れ落ちる。
(ああ、やっぱり戦っている静雄さんは、かっこいいよなあ)
人形の反応が周りから無くなった。既に人の数も少なくなっている。あと数人を残すばかりだ。
「ったく手間かけさせやがる……!」
呻きながら静雄はひとり、またひとりに拳を振るう。手加減はしているが殺さないように必死だ。
そして先ほどから切りつけられる度に聞こえるあの『声』。
『愛してる』
(うぜえ、何なんだよ)
そう考えた一瞬の隙をついて、サバイバルナイフの刃が迫った。とっさに腕を盾にする。腕に深くナイフの刃が刺さった。その瞬間、声が大きくなり、静雄の電脳内に響き渡る。
愛してる愛してる平和島静雄あいしてるあなたのことをとても愛している
「……っ!」
腕からナイフを引きぬくと、声は止んだがその声がずっと響いているような、そんな感触がする。
(何なんだ、今の)
電脳内を侵されそうなそんな狂気の声。しかし鳴りやまない耳鳴りのようなその声を、静雄は笑い飛ばした。
「ハッ、愛されるのは悪くないけどな」
掴んでいたナイフを投げ捨てる。
「俺にはもう、帝人っていう大事なものが有る」
お前らのことは、愛せそうにないよ。そう言って、嗤った。
最後の一人を倒した所で、エネルギーが切れ、静雄の思考と行動が停止した。
「……」
公園が見下ろせるビルの屋上、紅い目をした少女がじっと公園を見下ろしている。
「やーっと見つけたぜ」
その後ろから、声。どんどん近づいてくる。少女は振り向かない。
「今日は学校休んでたんだな。知らなかったぜえ。帝人が報告義務怠ってる証拠だよなあ。後で怒っておくから。しっかし、携帯のラブコールも愛のメッセージも見てくれないとは、俺振られたかあ?」
数歩後に「彼」が居る。それを感じて、少女はゆっくりと振り向いた。
「まさかまさかのどんでん返しだよ。お前も人形遣いだっただなんて思わなかった。しかも能力はAかSだな。どこにも所属してないから気づかなかったよ」
金髪の少年は、軽い口調で続けている。が、声のトーンが急激に、冷める。
「何故こんなことをした、杏里。事と次第によっちゃ『ダラーズ』はお前を許さねえ」
すいませんまだ長くなりそうだったので中編にしました……!
あわわほんとうにすいません書きたい事が多すぎるこの回……!
帝人の全力具合と、静雄が帝人べたぼれってことと、杏里ちゃんの秘密を詰め込んだら長くなりました。もうちょっとだけお付き合い下さい……!
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