BLとか腐女子っぽいネタとか小話の倉庫になります。
携帯電話が鳴っている。何処で鳴っているのかはわからない。アラームなのか電話なのかメールなのか。頭がぼんやりしていて判断がつかない。とりあえず手を伸ばしてみるが近くに無い様だ。手を彷徨わせていると、やっとの事で携帯電話が静かになった。
携帯は静かになったが、別の五月蝿い声が聞こえてくる。
「おー、杏里、おっはよー。どうした? え? ああもうこんな時間だったのか! 悪ぃ今日はちょっと行けそうにない、え? 帝人? あーうん、そうそう、熱、風邪! そんでほら、俺たちふたりぐらしじゃん? だから、俺が看病してあげようってことでひとつ! ノート? うん、頼むよ。まじ助かる。今度デートして埋め合わせするわ! は? ホームルーム始まる? わかった。それじゃあ連絡よろしく!」
嵐のような声が過ぎて、しん、と静寂が戻る。やっと帝人は身体を起こした。ソファーで寝ていたらしい。足がずり落ちて、ソファーの背にやっと引っかかっているような寝方をしていれば、そりゃあ身体も痛くなるはずだ。
ただ、身体の痛みはそれだけが理由ではない。それは自分の姿が8割方裸のままということが物語っている。白いシャツだけ引っ掛けて寝ていたとあれば、風邪も引くかもしれない。そういえば何だか鼻がむずむずするな、と思った瞬間くしゃみが出た。
「おおーい帝人よお、そんな格好してっから風邪引くんだ、ゾ!」
正臣につんと額をつつかれた。彼はもうすでに着替えていつもの部屋着でいる。腹が立ったので足を蹴っておいた。
「ちょっ、昨日の功労者に向かってその仕打ち!? あんな膨大な演算させられて、俺電脳焼けるかと思ったんだぜ!?」
「五月蝿いな、なんか腹立つ」
帝人は立ち上がると、冷蔵庫を開けて中の水を取り出した。きゅ、とペットボトルの蓋を捻って開け、中の水を飲み干す。
「仕方ないじゃないか、臨也さんは居ないし、幽さんも居ないし、静雄さんは演算苦手だし、そしたら紀田くんしか居ないんだもの」
「って言うか、この仕事臨也さんのだろ!? 一人でやらせといたらいいじゃんよお」
正臣は不機嫌になって頬を膨らませた。帝人はため息を吐く。
「ほかにも仕事を請けているから、ちょっと手伝ってって、言われて。ただ、こんな大きいデータだって思わなかったから……」
臨也は人形ではあるが、今まで主を転々と変えてきたことのコネを生かして「情報屋」を営んでいる。ブレイン型で情報処理能力も高いので、仕事の引く手は数多だ。その仕事を稀に帝人が手伝うことがある。今回もそういう軽い気持ちで引き受けたところ、臨也レベルの演算能力でも1日2日かかるような仕事を押し付けられた。
「幽さんと紀田くんで、二人で一緒にやってもらおうと思ったんだけど……」
幽はスケジュールが変わってドラマの撮影に行き、しばらく帰らないということになってしまった。そしてもう一人帝人が頼れる人形、静雄はパワー型特化のため、情報処理の能力が極端に低い。足しにもならないと判断した帝人は、正臣の能力をフルに使い、自分が計算を補助することでデータ処理をなんとか一晩で終えた。
「あとはもうちょっとまとめるだけだから、僕がやっておくよ」
「ったくお前も無茶しすぎ! お前だってまだ戻ってねーよ」
ほら! と正臣は手鏡を差し出した。帝人が鏡を覗き込むと、疲れた顔が写っている。そしてその瞳は青。
「体力気力全てにおいて能力値が下がってる。力使いすぎ! お前もう寝ろ!」
正臣が帝人の手をとった。寝室へ連れて行かれる。帝人は後ろから正臣に呟きかけた。
「いやでも、紀田くんのせいでもあるからね? これね」
「だって腹減るっしょ頭使うと」
人形は契約者―主と呼ばれる―の「身体の一部」を「餌」として、活動している。餌がなくなると活動できなくなるのだ。それを防ぐために、定期的に主の身体の一部、もしくは体液を摂取する。それが人間でいう食料の代わりだ。
帝人を契約者とする正臣、臨也、静雄、幽は帝人の身体を「餌」として生きている。普通は1人もしくは多くても2人だ。帝人は一気に4人との契約を持っている。これは人形遣いとしての能力が高いことを現す。
「でもさ、計算してる途中にとか止めてくれない。何度も間違えたからタイムロスしたじゃん」
「でも帝人よ、お前そういうけどさ、お前だって最後は気持ち良さそうに……っ」
ぐり、と足の甲に帝人の踵がねじ込まれた。不意打ちだったのでとても痛い。
「最後までしていいって言ってない」
「俺、すっげーフル稼働してたんですけど!? あのまま行ってたら俺死んでた! 充電してたから生きてる!」
「充電する先から力使ってたら意味ない!」
正臣は能力を使用途中で、腹が減ったと騒ぎ出した。腹が減ったということは、正臣の身体と力を維持することができなくなり、活動できなくなる可能性があるということだ。活動出来なくなるとそのまま人形は「死んで」しまう。
帝人に限らず、餌を与える時は大抵体を繋げる。人形が体液や身体の一部を摂取する場合は、それが一番手っ取り早いからだ。摂取する量が多いほど、行為は激しくなる。
正臣は自分が思っていたよりも、よっぽど活動する力が無くなっていたらしい。帝人が手が離せないというので、勝手に服を脱がせたり、勝手に身体を愛撫して、帝人にちょっかいをかけた。その気にならないなら、ならせるまでだ、と。
元々流されやすい性格の帝人は、正臣の施す愛撫に耐えられなくなって、計算をプログラムに任せ、正臣との行為に専念し始めた。しめしめ、と正臣はほくそ笑む。ただ、正臣の電脳内ではまだ演算が続いている。
今の行為は分かりやすく言うと「充電中の携帯電話を使って電話をしている」ようなもので、充電はすぐには終わらず、そして使ったそばから電池は消費されていく。
「結局朝までしてたし……思い出した、だから僕こんな格好のままなんじゃないか」
「そんでも俺頑張ったし! 朝には終わったじゃん? どっちも!」
「……馬鹿じゃないの」
帝人は正臣を冷ややかに見つめた。しかしすぐ目を伏せる。起きているのが辛くなってきた。
「ったく、よっ」
正臣が帝人の身体を担ぎ上げ、ベッドに下ろす。目をぱちくりさせている帝人に布団をかけ、上からぽんぽんと叩いた。
「悪かったよっ、反省してるっ」
はやくもう寝ろ! 正臣は帝人の額をぴん、と弾いた。
「……うん……」
帝人がゆるゆると目を閉じた。布団に寝転んだ事で安心してしまったらしい。相当疲労が溜まっているのだろう。正臣はそっとベッドから離れた。
帝人は人形遣いとしては優秀だ。ランクは低いが、いざとなれば物凄い力を発揮することも知っている。ただ、それ以外は普通のどこにでもいる高校生だ。自分たち人形とは違う「人間」である。
自分たちは人形の基準で物を考えがちだが、主である帝人は人間だ。基礎体力だって能力だって違う。
たまにそれを忘れそうになる。自分は元人間であるが、すでに人の身体を捨てた。
帝人のことはとても大事だ。護らなければいけないと思う。それは契約者だからだけではない、もっと別の感情も混ざっているように思う。ただ、その感情はなんだったのか、分からない。
(何だっけ、これ)
何となく設定とイメージだけで書いたらこんな感じに……。
そして静雄さんの扱いが酷い件。
ほかのキャラも書いてみたいので、そのうち続きというか別のおはなしも書きたい……な……。
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