BLとか腐女子っぽいネタとか小話の倉庫になります。
何だこれは。
正臣は目の前の光景に、目を疑った。
「あ、正臣。委員会ご苦労様」
耳に入る帝人の声も何だか遠い。
「正臣? どうしたの?」
「なあ帝人、そいつ……」
「ああ、彼? 黒沼青葉くん。1年生だって。彼もダラーズ所属の人形遣いらしくて、でも入ったばっかりだから良く解んないって……だから、僕達に色々話聞きたいらしいよ?」
ねえ、と帝人が振り返る。その向こうに、にこにこと人当たりの良い笑顔を浮かべた少年が座っていた。正臣は、その笑顔を睨みつける。
忘れるものか。
お前が、帝人に何をしたか、忘れるものか。
――黒沼青葉
ダラーズ所属の人形遣いで能力名は【科学者】。
帝人の本当の能力を知る人物で、その力に惚れ込み、帝人のレプリカを作り上げ、そのレプリカを『本物』にするために帝人を襲った。そのせいで、帝人に施した『鍵』が外れ、能力を行使し、帝人自身を危険に晒した。そして、心も身体も傷ついた帝人は、自分の心を護るためその時の記憶を全て消去し、帝人の中でその時の事は『無かった』事になった。
帝人の気持ちを思い、傷ついた気持ちが解った皆は、帝人の気持ちを尊重し、あの時の事は無かった事にしようと皆で示し合わせた。
だが、彼はまた、帝人の前に現れた。帝人はあの時の記憶を忘れてしまっているから、青葉とは初対面という事になるが、正臣はそうではない。忘れたくても忘れられるはずがなかった。
大事な帝人を傷つけた人物を忘れられるはずが、無い。
帝人が言うには、委員会で遅れると言った自分を待っている間、図書室に行った所声をかけられたのだと言う。自己紹介を受け、青葉もダラーズの人形遣いだと知った帝人は、彼と数分話すうちにすっかり打ち解けてしまったと話した。
ああ、それが彼の手だというのに、お前はまたそれに釣られるのか。でもそこがお前の良い所なんだけど。
「どういう事だよ」
「何が、ですか?」
「何でお前が今更帝人の前に出て来るんだよ、って聞いてるんだよ」
帝人が席を外している間、正臣と青葉は二人で対面に座って話していた。
「お前がやった事、忘れてねえからな」
正臣が青葉を睨みつける。青葉はにっこりと笑った。
「許していただこうとは思っていませんよ。僕はそれだけの事をしたという自覚はあります」
「じゃあ何で帝人と一緒に居るんだ」
「……帝人先輩を諦めた訳では、ありませんから」
正臣の眉間の皺が深くなる。青葉の目が細められた。
「あの時は帝人先輩の能力だけを求めて、帝人先輩を傷つけた。そして失敗してしまいました。あれから俺は考えたんです。帝人先輩は、あの能力とそれを制御する感情があってこそ【皇帝】足りえると。それで、帝人先輩は完成するのだと思いました。いくら俺が身体を作ってそこに帝人先輩の心を植え込んだとしても、そしてその逆をしても俺の求める【皇帝】はそこには居ない」
青葉はひたと正臣を見据えた。
「だから俺は今度はちゃんと帝人先輩と対等に話をして、俺をきちんと解ってもらった上で……そうですね『好き』になって頂ければと思って……正攻法で、貴方達から奪う事にしたんです」
「何だと?」
「俺が帝人先輩の役に立って、俺と組む事で帝人先輩が貴方達の事はもう不要だと、思うようになれば、良いと」
「ふ……ざけんな!」
正臣は勢い良く立ち上がった。ばん、と机を叩く。周りの生徒達が何事かとこちらを見つめているその中に帝人の顔があった。
「ど……したの……正臣」
「……悪い、何でもねえ。帰ろうぜ帝人」
正臣は青葉の方を見ずに帝人の下に近寄った。帝人の肩を抱いて反転させる。帝人は慌てた様子で正臣と青葉を交互に見つめた。
「え、で、でも、僕は青葉くんと」
「あ、良いです良いです。俺の事はお気になさらず。紀田先輩何だか体調悪そうなので、着いていてあげて下さい」
「え、そうなの? そうなら早く言ってよ。帰ろう、正臣」
「……ああ」
「またね、青葉くん」
手を振る帝人に青葉は手を振り返した。二人の背中が図書室から出て行くのを見届けてから、ふ、と表情を変える。その顔は冷酷な【科学者】の顔。
「紀田先輩が一番厄介そうだなあ……元が人間な分、感情が豊富すぎてやり辛い……」
二人は沈黙のまま帝人の部屋に戻った。気まずいままとりあえず二人はベッドに腰を落ち着けた。正臣が帝人の肩を抱いて引き寄せる。帝人も正臣の微妙な感情の変化を感じ取って、そっとそれを伺うように寄り添った。
「帝人」
「何?」
正臣は、小さな声で呼びかけた。正臣の胸にぺたりと頭をくっつけていた帝人は、響く正臣の声に目を細めた。
「お前さ……黒沼の事どう思ってる?」
「どう、って……?」
帝人は首を傾げた。正臣の目が帝人の目を見据えている。正臣の黄色い人工水晶が、ふと揺らいだ、ような気がした。
「別に、今日偶然話しかけられただけだし……まだ彼のこと何も知らないし……どう、って言われても、何も、としか言えないよ」
「……そっか」
正臣は帝人の頭を撫でた。そして、帝人の身体を組み敷き、顔の横に手をついて囲う。そっと片手で帝人の顔を撫でた。
「正臣?」
何時もと違う正臣の表情に、帝人は訝しげに名前を呼んだ。正臣が泣きそうだ、と感じた。
「あいつには、渡さねえよ」
そう呟いて抱きついてきた正臣を、帝人は抱きとめる事しか出来なかった。
正臣は眠る帝人の頭をゆっくりと撫でた。目尻に溜まった涙を指でそっと拭う。
先程言おうとしていた言葉を、正臣はゆっくりと頭の中で反芻した。
黒沼青葉と関わるのを止めろ、と言いたかったのだ。でも、言えなかった。
それを言う事で、忘れていた記憶が戻るのを恐れたのだ。
あの時の帝人は傷ついていた。その傷ついた心と身体を癒すのにとても時間がかかった。その時帝人が苦しんで苦しんで、自分達も苦しんだ。主の痛みは自分の痛み。それを思い出させるのが辛かった。それでまた傷つけてしまったら、今度はどれぐらいの時間をかけて癒せるのだろうか。
そう思いながら、正臣は投げ出されていた帝人の手をそっと握った。
もうこの手は離さない。何と言われようと、帝人に拒絶される事になっても、離すつもりは無い。
「もう、この手は離さねえよ、帝人」
その思いを刻むように、握った手の薬指にそっと、口付けた。
補色サンドが書きたかったので、また青葉くんに登場していただきました。
今度は正攻法で正面からぶつかっていただきました。まあ前のこと忘れてるから、帝人とは初めましてから始まるわけです。
臨也や静雄や幽は人形なんで、大雑把に言えば感情はプログラムの産物であり、騙すのは電脳内の記憶を書き換えてしまえば良いという感じですが、正臣はちょっと別格な上に帝人とのつながりが一番強いので、青葉としては一番やりにくそうな相手なんじゃないかなあ、と思ったので補色サンド話にしてみました。
今後もちょいちょい絡んでいただく予定です。今度は火種サンドで書きたいなあ。
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