忍者ブログ
BLとか腐女子っぽいネタとか小話の倉庫になります。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ライ鳴ライ的な。
どうもリバーシブルなものがすきなようだ。

「華」という合同誌を出したときに書いた物。


使者から帝都、という言葉が出たとき、賽は一瞬顔を歪めた、ような気がした。
それでも、十四代目葛葉ライドウとして責務を全うします、と小さく言った。

二人きりになってから、業斗は何故、とそれを尋ねた。

「業斗さん、僕に付いてくれるなら、きっと僕の家の事も知っていますよね」
賽は淡々と喋り始めた。

「僕は、あの街が、好きではないのです」



十四代目葛葉ライドウ。本名は「篠山 賽」(しのやま さい)。
彼の生まれは東京。とある華族の家に生まれた。


母は子供の賽から見ても、とても綺麗なひとであった。深窓の令嬢という言葉がしっくりとあてはまるような、いつも物静かに、寂しそうに笑っているひとだった。
そしてその母と自分の世話をしてくれたばあや。その二人が賽の家族だった。
父は月に一度程顔を見せるのみだった。それは父には妻がいたからだ。
だから母は、とても肩身の狭い思いをしていたと思う。ただ、賽にはそれを絶対に悟らせなかった。
父と母の出会いは何処ぞの家で行われたパーティだったそうだが、父は自分には妻がいるのにも関わらず母の元に足しげく通ったそうである。母には妻がいることは黙って。
そうして男女の関係を重ね、母はとうとう子を身篭った。
父は母が身篭ったことを知ると、すぐに内密に家に呼び寄せた。母の家には父の会社から多額の借金があったため、その肩代わりという名目で母を手に入れた。
母はすぐに郊外にある父の別邸に住まわされた。賽が生まれてからもずっとそこに暮らしていた。
正妻には子が居たし、賽が居れば後継者だのなんだのとまたややこしかったからだろう。

プライドの高い父は隠したかったのだ。自分の過ちを。


賽は、母が居ればよかった。
母とばあやと三人で暮らしていければそれで。


賽が五歳になった頃、不思議なものが見えるようになった。
それは、よくわからない子供のような形をしたものや、美人な、しかしどこか怖い印象のある女性や、異形のもの。さまざまだったが、それらはすべて賽にしか見えていなかった。
母にそのことを話すと、母はにっこりと微笑みながら賽の頭を撫でた。
「賽には、神様の力があるのね」
母の先祖にはそういう力を持ったものが極稀に生まれていたと後から聞いた。母も昔は見えていたらしいが今はもう分からないという。
自分もその血を引いたらしかった。

人にはない力を持ったことが怖くもあり、しかし誇らしかった。


賽の十歳の誕生日、三人でささやかに祝った後、賽が部屋に戻り寝ているとその人物は現れた。
黒い布を目深に被り、黒い着物を纏った人物。
「お初にお目にかかります。私は葛葉縁の者です」
「クズノハ?」
聞きなれない名前。賽は首を傾げた。
「貴方様のお力を見込んで、14代目ライドウを継ぐ者として山に来て頂きたくお迎えに上がりました」
ライドウ、とは。賽は良く分からなかった。しかし、此処を離れなければならない、それは分かった。
「母様を置いてはいけません」
そう言うと、黒衣の人物は
「母上様にはご了承頂いております。彼女もまた葛葉縁の者」
母が了承した。母はこうなることが分かっていたのだろうか。

だから今日、自分が寝た後枕元で自分の頭を撫でながら泣いていたのだろうか。

「わかりました」
はっきりした声で、賽は言った。
「僕を連れて行ってください」


そうして賽はお山に篭った。
霊力を高める修行をしたり、知識を得るために色々な書物を読んだりした。
修行は厳しいものであったが、賽は泣かなかった。
これも母のためと思い、堪えていた。


そして最後に試練を受けて、十四代目葛葉ライドウを襲名する。




最初帝都に行けと言われたときは、嬉しくもあり、そしてまた厭だとも思った。
母は自分が山に居る間に病死したと連絡があり、ばあやもまたそれを追うように亡くなったと聞いた。
帝都に未練はなくなってしまった。また、戻る場所も。
帝都には、まだ父がいる。しかしあの男を父と呼ぶことはできなかった。
母が居なくなった帝都には、もう楽しい記憶などない。


「だから僕は、帝都は好きではないのです」
「そうか」
それきり、業斗は黙ってしまった。
「心配しないで下さい。僕はもうライドウになった。篠山賽ではなくなったのです」
きちんとライドウとしての使命は果たします。賽はそう言った。

ただ、その顔はやっぱり、少し寂しそうではあった。




電車に揺られてやってきた帝都。
帝都での生活場所が与えられるというので、地図を片手に駅から歩いた。
着いたのは、とあるビルにある探偵社。
「ここのようだな」
「ええ」
ドアをノックすると、ややあってのんびりとした声が「どうぞ」と言ったので中に入った。
「……埃っぽいな」
業斗がライドウの肩の上で眉をしかめた(ように見えた)。
「やあ、君が十四代目?」
「……こんにちわ」
中央の大きなデスク。そこで仕事をしていたらしい人物が顔を上げてにっこりと笑った。
帽子をとって挨拶すると、その人物はソファーに手を向け、
「まあかけたまえ」
と言った。そう言われたので遠慮なく座ることにする。部屋の中央に鎮座したなかなか趣味のいいソファーとテーブル。しかし埃がうっすらと積もっていた。手でそれを軽くはたいてから賽は腰を下ろした。業斗は賽のひざに乗る。
「俺は鳴海。ここの探偵社の……まあ代表というやつ」
「十四代目、葛葉ライドウです。こっちは業斗さん。これからお世話になります。どうぞよろしくお願い致します」
ぺこり、と賽が頭を下げると、鳴海は少し驚いたような顔をしてから、微笑んだ。
「これはご丁寧に。何のもてなしもできないけど、こんなところでも雨風ぐらいはしのげるからさ」
「しかし襤褸だな。しかも汚い。もう少し掃除をしたらどうなんだ」
「おっと。業斗さん厳しいな」
鳴海は猫が喋るのにも驚かない。賽は尋ねた。
「あの……驚かないんですか」
「何を?」
「業斗さんのこと」
「別に。いま帝都で起こっている事件に比べたら、業斗さんなんてかわいいもんさ」
ねえ。と鳴海は業斗の頭を撫でた。
「悪魔は見えないけどね。なんとなく感じる程度」
「葛葉のことをご存知で?」
「まあ、大体の所は、ね」
とりあえず、と鳴海は手を叩いた。
「君はここにいる間は、一応俺の助手として働いてもらうことになるけど、その代わりこの事務所と隣の部屋は好きに使ってくれていい。隣の部屋は君用にしたからね」
本当は俺の仮眠室だったんだけどなーと鳴海は笑った。
「荷物は……それだけか。とりあえず荷物置いて、それからさっそく仕事をしてもらうかな」
鳴海は、よろしく! とライドウの肩を叩くと、また大きな机の前に戻った。
賽は「それだけ」と言われた荷物――大きめのトランクを持つと、隣の部屋へ入った。


鳴海が「元・仮眠室」だと言っていた部屋は六畳程の広さで、窓がひとつ、文机がひとつ、布団が一組、押入れがひとつという簡素な部屋だった。
ただやっぱり、文机や窓枠には埃がつもり、布団も薄っぺらいぺったんこのものではあったが。
賽はトランクを置くと、立て付けの悪い窓を開けた。明るい。今日は天気がよかった。まぶしくて、少し目を細めた。
「行きましょう業斗さん。仕事があるそうです」
「ああ、そんなこと言っていたな。まったく、何やらせる気だ」
業斗はぶつぶつ言いながら、賽の肩に乗った。


「これ、ポストに入れてきて。それからメモに書いてあるの買ってきて」
そう言って鳴海は手紙と小さく畳んだメモを手渡した。
「お金はこれ。買い物する場所はメモに書いてあるから。じゃぁよろしく!」
「おつかい、ですか?」
「そう。まずはこの街に慣れることから始めようか。山に篭ってばかりだったんだろう?」
賽は頷いた。鳴海は腕を組むと、フウ、と息を吐いた。
「君はデビルサマナーであるまえに、一介の少年でもある。少しは息を抜くことも大切だし、今日はこっちに来たばかりだろう? 今後動きやすくするためにもこの街を知っておいたほうがいい」
「お前は息を抜きすぎだな」
業斗が鳴海に向かって呟いた。鳴海は聞こえないふりをした。
「まあこいつの言うことも一理ある。賽、今日はこの街を探索することに費やすことにしよう。あとついでに鳴海の仕事もやってやれ」
「ついでってひどいな」
鳴海は苦笑した。賽は「わかりました」と業斗に言って、鳴海から預かった財布とメモをポケットにしまった。
「では、行って来ます」
「ああ、ちょっと待って。まだ聞いてないことがあるよ」
「何でしょう?」

「君の本当の名前は?」

賽はちょっとびっくりしたように目を丸くすると、すぐにいつもの顔に戻った。
「……僕には葛葉ライドウという名前しかありません。前の名前はもうないのです」
「でも業斗さんは呼んでただろう? 俺には教えてくれないのかな?」
ん? と顔を覗き込まれて、賽は顔を伏せた。
こんなに近くで誰かの顔を見たのは久しぶりだった。
退いてくれそうになかったので、仕方なく賽は小さく呟く。
「篠山、賽、といいます。でも、もうこの名前は」
「分かった」

鳴海は賽の頭を撫でると、ひらり、と手を振った。


「お使い、行ってらっしゃい、ライドウ」



ポストはすぐに見つかったので手紙を投函し、ゆっくりと辺りを探索してみた。
鳴海探偵社のある筑土町界隈は人通りも多く、にぎやかだった。しかし、ひとつ裏路地へ入ると、少しばかり違う風を感じた。

悪魔が現れる前は、よくこんな風を感じる。

「気をつけろ。この辺りには、いる」
後ろをついてくる業斗が、賽に囁いた。賽も気をつけながら歩く。
辺りは家やビルの陰で薄暗い。かつかつと石畳をうつ靴の音が響く。


瞬間、音がなくなった。

「!?」
「賽、来るぞ!」


業斗が叫ぶと同時に、賽は腰の剣を抜いていた。襲い掛かってきた死霊を切り付ける。しかしまだ敵は倒れない。
少し距離を取り、マントの下から一本の細い管を取り出した。
賽が力を込めると、それは淡く光りながら、蓋が勝手にくるくると外れていく。
「やっと出してくれたか」
細い管からふわりと光が溢れ、それは形を作った。小さい子鬼のような生き物。これが悪魔。
この悪魔は賽がライドウになるときに仲魔にしたものである。
「ウコバク、頼みます」
「あいよ。しかし街着いて早々たぁ、忙しないな」
「仕方ないです。この街はなにか澱んでいる」

その澱みが何であるか確かめるために、賽は此処に来た。


もうこの地には踏み込むことはないと思っていたのに。
踏み込みたく、なかったのに。



「お前ができたばっかりに俺は」


よく父親から罵声を浴びた。お前が生まれてこなければ。そう言ってよく自分をぶっていた。
月に一度程度しか顔を見せないくせに、父親でなどあるものか。

お前を認めてなど、やるものか。

そう思って睨んでは、またぶたれた。


自分の内に、黒いものが広がっていく。



「賽!」
業斗の声で現実に戻る。剣を構えなおした。危ういところで死霊が振り上げた拳を剣で受ける。
「瘴気に当てられたな。一瞬、引き込まれかけていたぞ」
「すみません」
「まだまだ鍛えなおす必要がありそうだな」
業斗がそう言うと、賽はうっと声を詰まらせた。
ウコバクの放った炎と、賽の剣でどうにか死霊たちを倒す。
辺りの音が戻った。賽は剣をしまうと、管を出しウコバクに向けた。
「ご苦労様」
光の粒となったウコバクは管の中に吸い込まれていった。蓋を閉めると管をしまう。
「……少し、昔のことを思い出してしまいました」
「父親の事か?」
「……はい」
賽は帽子を目深に被りなおした。

「やっぱり、この街は好きではありません」



メモに書かれた場所にやってきた賽と業斗は顔を見あわせた。
「ここだよな?」
「ここです」
メモには『富士子パーラーにて好きなケェキ2個買ってきて良し』とだけ書かれていた。
「甘い物好きそうな顔には見えんがな」
「でも頼まれたのですし、行きましょう」
お客様の分かも、と賽が言うと、業斗は
「あいつケチそうだったぞ。客にケェキなぞ出すようには見えん」
と一蹴した。

「いらっしゃいませー」
ドアを開けると、ドアの上のベルがちりりん、と澄んだ音をたてた。その音に気づいた店員がにこやかに出迎える。
「すみません、ケェキを、その」
「お持ち帰りですか?」
賽が頷くと、店員は笑顔を崩さずガラスケースを指すと
「それではお好きなケェキをお選び下さい」
と言ったので、賽はガラスケースを覗き込んだ。
色とりどりのケーキ。その中には定番のイチゴのショートケーキもある。
賽は思い出した。

山に行く前、最後に皆で祝った自分の誕生日。おおきなイチゴの乗ったケーキを食べた。

「それじゃあ、このイチゴケェキ二つください」



事務所に戻ると、鳴海は新聞を読んでいた。帰ってきた賽と業斗をみて笑顔を浮かべる。
「お帰り。どうだい下見の方は」
「まずまずでした」
「裏通りとかは、少しヤバめだろう?」
「……ええ」
少し賽の顔が曇ったので、鳴海は新聞を置くと賽のそばに寄った。
「そうそう、お使いはちゃんとしてきてくれた?」
「ええ、これです」
四角い小さな箱。鳴海は鼻歌を歌いながらそれを開ける。
「おっ、イチゴかぁ。中々見る目あるね」
あそこのイチゴケェキは美味しいんだぞう、と鳴海は嬉しそうに言って、早速皿とフォークを用意した。
「ライドウちゃんは座っていなさい」
手伝おうとした賽を制し、鳴海は紅茶を入れた。ふわりといい香りが漂ってくる。
「俺だってお茶ぐらいは入れれるんだから」
「それ以外はさっぱりか?」
「そんなことないですよー。俺完璧主義なんで」
笑いながら鳴海が紅茶の入ったカップを賽と自分の前に置いた。業斗は、どうだか、と呟いて鼻を鳴らした。そして賽の膝の上で丸くなる。
「さぁ、俺のおごりだから食べて。ささやかだけどライドウちゃんが此処に来たお祝いだ」
お祝い。久しくその言葉は聞かなかった。お山では修行ばかりだったし、最後にした誕生日のお祝いなどはもうすでに遠い日の出来事で。

しかし何故この男は、素性も良く分からぬ男と猫を側に置いておこうなどと思ったのだろうか。
デビルサマナーの役目にはさまざまなものが付きまとう。それはいいことばかりではない、悪いことだってたくさんあって、側にいれば必ずとばっちりを食うだろう。そしてそうなったとき、ちゃんと鳴海を守れるかどうかも分からない。

「鳴海さん」
「ん?」
「何故、こんなによくしてくれるんですか?」
突然の問いに鳴海はフォークをくわえたまま、うー、と言った。それからゆっくりと口を開く。
「まあなんていうか……俺にも色んな理由があってね、君を預かって欲しいって言われたときは正直、迷っていたんだ、いや、断ろうかと思っていたんだけど」
そこまで言って、茶を一口すする。
「でもなんていうか……色々聞いているうちに君に興味を持ってね。それに、その若さでデビルサマナーをやってのける奴って、どんなもんか見てみたいと思って」
鳴海はにっこりと笑った。
「まあ何のことはない、普通の書生っぽいけど……でも、君を預かってみるのも、面白いかなと思ってさ」
鳴海はカップを置くと、手を差し出した。

「君には期待しているよ。宜しく、相棒」

その手を握り返そうか、一瞬迷った。
幼少時は箱庭暮らしで同年代の友人もおらず、山に篭ってからは一人だった賽に、その手はとても魅力的なものであった。
しかし戸惑う。本当にこの手をとっていいものか。

不安になる。また傷つけられないだろうか、と。

でも見ず知らずの自分にも、こんなに優しい。
この人は、信じてもいいのだろうか。

賽は知らず、手を伸ばしていた。そして鳴海の手を握り返す。


「此方こそ、宜しくお願いします」



夜、鳴海は事務所の近くにある家に帰り、賽は与えられた部屋で床に就いた。
「業斗さん、今日はお疲れ様でした」
「賽も長旅で疲れただろう。退魔もしたし、今日はゆっくり休むといい」
色々あったしな、と業斗は言うと、賽の側に寝転んだ。

「業斗さん」
「……ん?」
まどろんでいた業斗に、賽はひとりごちるように呟いた。

「僕は、この街が好きになれそうです」
「……そうか」


鳴海のような人間がまだいた。
自分が知っていたのはほんの一握りのものだったのだと、信じたい。

もっとそんな暖かい手に触れてみたい。


その手を守るため、この街を守りたいと思った。

拍手

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
このサイトについて
HN:
猫屋千成
性別:
非公開
自己紹介:
こちらは猫屋千成の二次創作ログ倉庫、及び同人サークル「発熱まつり」のインフォメーションブログサイトです。
※オンラインブックマークはご遠慮下さい!※
ツイッター:chinari0727(鍵つき。フォローはお気軽に)
Pixiv:1604416
相方:てっP君のPixiv
こっそり呟いているかも
カレンダー
03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
最新CM
ブログ内検索
カウンター
アクセス解析
バーコード
忍者ブログ [PR]