昔出した九龍妖魔學園紀本「男は愛嬌」に掲載したもの。
「たまには部活に出たらどうだ?」と言われた。
何時もは授業が終わるとだらだらと教室に残って話をしたり、夜の探索へ着いて来てもらうメンバーへメールをしたり、購買で買い物をしたりして過ごしている。
そして下校のチャイムと共に家路につき、部屋で依頼を受けそして遺跡に赴く。
ここに来てからずっとそんな放課後を過ごしていた。
一応、ここに来る前に手続きをする際、「部活動」の欄にはこう書いたのだ。
「美術部」と。
じゃぁたまには出てみるかな、と隣にいる皆守を見れば、いつもどおりアロマをふかしつつ眠そうな声でこう答えた。
「俺は帰宅部だから」
と、分かったような分からないような返事を寄越した。
何時もなんだかんだといいながら側に居てくれる彼も、部活動にはついてきてはくれないらしい。
「寂しいわぁ」
冗談交じりにそう言うと、皆守は微妙な顔をして九龍に
「甘えんな」
という言葉と同時にデコピンを与えた。
九龍は一人、美術室のドアを開けた。
昼休みや授業の時に来たことはあったが、夕方に来たことは無い。
ドアを開けると薄暗かった。夕暮れの光が薄く部屋を照らしているのみ。
その時、部屋の隅で黒い人影が動いた。思わず学ランの内ポケットに手をやる。そこには銃がある。速く動ける自信はあった。
「葉佩君ね」
声がした。聞き覚えのある声に九龍は警戒を解いた。
「何や、白岐さんかいな・・・ビビった」
「驚かせてしまってごめんなさい」
「いや、こっちこそ邪魔してゴメン」
でも。と白岐は淡々と尋ねた。
「何か用?」
「いや、たまには部活に出ようかなーって・・・」
「そういえば貴方も美術部員だったわね」
白岐は九龍の側の棚を指差し、
「その棚の中のものは美術部のものだから、好きに使って」
そう言うとまた自分の絵に向き直った。九龍は早速棚の中を物色し始めた。
雑多に詰め込まれた棚の中。割と整頓されていた。
1冊のスケッチブックを手に取る。中を見るとまだ空きがあった。
「これ、借りていい?」
「好きにしていいわ」
振り返りもせずそのまま返事が帰ってきた。九龍はそのスケッチブックとペン立てにあった鉛筆を拝借する。
窓の側へイスを運び、そこに座った。外が良く見えた。
特にこれといって何もない、殺風景なものだったが。
鉛筆を走らせながら、九龍は話し出した。
「文化部やったら、何でも良かってん」
白岐は顔を上げずそのまま絵に向かっていた。九龍は話し続けた。
「トレジャーハンターの訓練んときに筋トレなんてアホほどやったし。スポーツかって格闘技かって護身術かて」
鉛筆を走らせる音が、響いた。
「スポーツも一杯やったなー。でも俺は個人競技の方が好きやな」
落ち着きないし、協調性もないし。と九龍は笑って続けた。
「絵描くの好きやったから、いっつもどっか行ったら風景とか描いてたな。遺跡とか」
手は動き続ける。
「だからって、上手いことないけど・・・」
パタン、とスケッチブックを閉じる。そして反転して椅子の背もたれを抱えて座る。顎を背もたれの上に乗せてにんまりと笑った。
まるで、猫のようだ。
九龍の笑った顔を見て、白岐はそう思った。
「白岐サンの絵は、好きやな」
「・・・有難う」
九龍はまた口を開く。
「そうやね、俺は任務でこの学校に来たけど・・・そう言えば学生らしいことはしたことなかったな。こうやって制服着たり・・・とか。寮はおったことあるけど・・・」
こんなゆったりした生活ではなかった、と九龍は笑った。
《宝探し屋》になるためには、いくらかの教養と研修をこなし、そしてベテランの《宝探し屋》のバディとなって遺跡についていく。
九龍の場合は、それが両親だった。
養成所でいくらか勉強し、そして両親について世界中を回った。
《宝探し屋》だったのは母親で、父親はそれに着くバディだった。父親は九龍の目から見てもバディらしからぬバディだった。
銃や宝は似合わない、優しいひとで、何時も笑顔だった。
父親が言った言葉が、全て好きだった。
「大切な人を、何時までも大切にしてあげて下さい」
その言葉が今酷く耳に残っている。
「俺、任務達成率は優秀やったからね。すぐに仕事をもらえて良かった。ちょっと危なかったけど」
「危なかった・・・?」
「殺されそうになった」
重い言葉。
白岐は顔を顰めた。
「大丈夫、ほら、俺運はいいみたいやし?」
ね? と首を傾げる九龍に、白岐はふうと息をついてみせた。九龍はまた話し出す。
「今回で任務二回目・・・。前は一応達成したようなもんやったし。今回は一人やし・・・ちゃんとやってみせんと」
「だから、邪魔するものは許さない。誰であっても」
はっきりと
はっきりと、そう言った。その顔は、何時もの彼からかけ離れたそんな表情。
「彼でも?」
白岐がぽつりと呟く。九龍は軽く眉を上げた。そして苦笑する。
「白岐さんには適わんな」
九龍は面白そうに目を細めて笑った。
「誰であろうとも」
その言葉に、白岐は感じた。
この人は、一人で戦うつもりなのだと。
誰と?
彼と。
「で、何処まで分かってんの、白岐さん」
「貴方が、彼をとても気に入っているという所までよ」
ただ、それは懐いているだけなのか、とても好きなのか、それとも愛なのか。
好きの表現にもたくさんあって困る、と以前九龍が言っていたのを思い出した。
「LOVEとLIKEで分けるなら?」
聞いてみる。九龍は、それは勿論、と言った後
「LOVE」
と、とても良い発音で言った。
「じゃぁ何故」
「やっぱり任務が優先やから」
嘘吐き。
本当は、どうなの?
貴方にとって彼は、何なの。
「教えてあげへん」
白岐は口を押さえた。思わず呟いてしまったらしい。
九龍はにっこり猫のように笑うと、立ち上がった。
「そろそろ下校時刻ですよん」
九龍がぴっと人差し指を立てた。同時に、下校のチャイムが鳴る。
「ナイスタイミング。じゃぁ、白岐さん、また明日」
「ええ・・・また、明日」
九龍は鼻歌を歌いつつ、美術室を出て行った。とたんに静かになる。下校のチャイムの音だけがいやに響く。
「不思議な人」
昇降口を出て、九龍は伸びをした。校門に向かって歩き出す。
すると、H.A.N.Tがメールの着信を告げる。
『もう終わったか? 今マミーズに居るから来い』
「オーケー」
呟いて、H.A.N.Tで返事を返し、九龍は走り出した。
「平和が一番ですよ。本当は君には《宝探し屋》にはなって欲しくなかった。でもやっぱり、こうやって見ると、君はママの子供なんだなぁと思いますよ。」
頭をそっと撫でられた。
「強く、生きて下さい九龍。そして大切な人を守れる強さを。何者にも負けない強さを」
分かってますよおとうさん。
俺の好きな人はとても気高くて強くて俺が守る必要はないかもしれないけど。
俺の前に立ちはだかるというのなら負けることはできませんけど。
強く、強く生きていきますよ。
彼と共に。
だって俺は、彼のことがとてもすきだから。
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